鬼の類型

甲州街道訪ね歩き

鬼の類型


 大嶽丸(おおたけまる)は、桓武天皇の時代、伊勢と近江の国境にある鈴鹿山一帯を根城としていた日本で最も強大であるとされた鬼神魔王であり、八岐大蛇の子供という説もある酒呑童子、白面金毛九尾の狐玉藻前と並んで日本三大妖怪に数えられています。

 彼は八岐大蛇の子供という説もあり、雷鳴や火の雨などの神通力を使って人々を脅かしていました。彼は阿修羅から贈られた「大通連(大とうれん)」「小通連(小とうれん)」「顕明連(けんみょうれん)」の三振り剣「三明の剣」を所有していて、その力は絶大でした。

 彼の最大の敵は、坂上田村麻呂という武将でした。田村麻呂は桓武天皇の命によって大嶽丸討伐のために鈴鹿山に向かいましたが、大嶽丸との戦いは長く続きました。

 ところで、同じく鈴鹿山に天下った鈴鹿御前という天女が住んでいました。
 大嶽山は鈴鹿御前に恋い焦がれ、美しい男子に変身し毎夜鈴鹿御前の元に通い詰めますが、想いは叶わず 業を煮やしていました。
 そんなある日田村麻呂の夢に老人が現れ、鈴鹿御前の存在を告げます。次の日、田村麻呂は夢のお告げに従い鈴鹿山の奥深く入るとひとりの美しい女性に出会います。女性に誘われるままに館を訪れ、契りを交わします。
 その女性こそ鈴鹿御前でありました。鈴鹿御前は田村麻呂が鈴鹿山に出没する鬼神を退治するのを助けるために天下ったのでした。

 ふたりはまず大嶽丸からその「三明の剣」を奪うための一計を案じます。
 その夜、いつものように鈴鹿御前の元に現れた大嶽丸に鈴鹿御前は告げます。
 「田村麻呂という武将から命を狙われています。だから身を守るためにどうぞ貴方の武器を私に貸してください」と。そして首尾よく「三明の剣」のうち「大通連(大とうれん)」「小通連(小とうれん)」を奪うことに成功します。

 その時、田村麻呂が現れ、大嶽丸との戦いとなりました。
 大嶽丸は身の丈十丈の巨大な鬼神となって眼光鋭い眼差しで田村麻呂を睨み、神通力の全てをもって豪雨のように剣・矛を田村麻呂に浴びせます。
 対する田村麻呂は千手観音と毘沙門天の加護を得て応戦。
 田村麻呂は素早の剣で大嶽丸の首を切り落とし、その首は都に運ばれました。

 しかし、大嶽丸は天竺に戻って「三明の剣」の残りの一振り「顕明連」の力で再生し、再び鬼神となりました。
 彼は陸奥の国に出没し、田村麻呂と鈴鹿御前は再び討伐のために陸奥へと向かいました。大嶽丸は田村麻呂によって二度目の首を落とされましたが、その首は田村麻呂の兜に食らいつきました。
 田村麻呂は兜を重ねて被っていたため難を逃れ、大嶽丸の首は平等院に納められました。

 大嶽丸の伝説は、『鈴鹿の草子』や『田村の草子』などの文献に記されています。
 また、鈴鹿峠一帯には、田村麻呂の大嶽丸討伐の足跡が数多く残されています。