鬼の類型

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鬼の類型


 鬼鎮神社は、埼玉県比企郡嵐山町にある神社で、全国的にも珍しい、鬼が祭神として祀られている神社です。
 この神社の創建は寿永元年(1182年)、畠山重忠の菅谷館の鬼門に当たる場所に厄除けとして設けられたのが始まりで、鬼門封じに建てられた神社であるから、創建当初から鬼と関わりがあるとされています1。

 節分の際には「福は内、鬼は内、悪魔外」と掛け声をして豆をまくという伝統があります。
 鬼は内と言うのは、他の寺社から追い払われた鬼がここにやって来られるようにするためとも言われ、また悪魔とは参拝者に取り憑いた魔のことであり、これだけをうち払うのだという1。

 また、地元では「鬼鎮様」と呼ばれる伝説も残されています。

 「鬼鎮様」とは、鬼鎮神社の祭神である鬼のことで、地元では敬称として「様」をつけて呼ばれています。
 この鬼は、かつて刀鍛冶の弟子として働いていた若者で、親方の娘を嫁に欲しくて、1日に刀を100本打つという難題に挑んだという伝説があります。
 この伝説は、以下のように語られています。

 ある刀鍛冶の元に若者が弟子入りした。そして大いに働きだし、ある時、親方の娘を嫁に欲しいと言ってきた。
 鍛冶屋は「1日に刀を100本打てたら嫁にやろう」と約束する。
 すると若者は一心不乱に刀を打ち始めた。
 その勢いは凄まじく、親方は気になって様子を覗いた。すると若者の姿はいつしか変じて鬼となっていたのである。
 おののいた親方は、無理やり鶏を啼かして夜が明けたことにして、作業を中断させた。
 そして夜が本当に明けた頃に仕事場に行くと、最後の1本を作るところで若者は槌を握ったまま死んでいた。
 哀れに思った親方は「鬼鎮様」として宮を建てて祀ったという。

 この伝説は、鬼鎮神社の由来や鬼の性質について説明するものと考えられます。
 鬼鎮神社は、鬼門除けとして畠山重忠が建てた神社であるとされていますが、その前にすでに鬼を祀る宮があったということを示しています。
 また、鬼は、人間を超えた力や能力を持つ者であり、人間の禍福を支配する存在であるということを示しています。
 鬼は、人間の超人や英雄であるという考え方です。