天狗の変遷
天狗の歴史~江戸時代(48天狗の登場)
『天狗経』は、修験道の秘経で、修験者たちが唱えることで、全国の霊山から天狗たちを招聘し、悪魔を退散させたり、怨敵を調伏したりなどの諸願成就させると言われています。
この経文は、「南無大天狗小天狗」から始まり、愛宕山太郎坊・鞍馬山僧正坊・比叡山法性坊・横川覚海坊・富士山陀羅尼坊・秋葉三尺坊など、日本各地の天狗名を連ね、「総じて十二万五千五百、所々の天狗来臨影向、悪魔退散所願成就、悉地円満随念擁護、怨敵降伏一切成就」の加持、「おんあろまやてんぐすまんきそわか、おんひらひらけん、ひらけんのうそわか」と結ばれています。
「あろまや」とは、一説に金星のこととされ、転じて妖星=あまきつね=天狗の異名となりました。また「すまんき」は、天狗の象にあるように、天狗が従える「数万騎」の狐を意味するといわれます。
全国には有名な天狗が四十八天狗おり、名のない天狗まで含めると何と12万5千五百の天狗がいるというのです。
これらの天狗たちは、それぞれが特定の霊山を守護しており、その霊山の名前を冠しています。例えば、「愛宕山太郎坊」は京都の愛宕山、「鞍馬山僧正坊」は京都の鞍馬山、「比叡山法性坊」は京都の比叡山、「横川覚海坊」は京都の横川、「富士山陀羅尼坊」は静岡の富士山、「秋葉三尺坊」は静岡の秋葉山など、全国各地の霊山を守護しています。
『天狗経』は、修験道の修行者たちが山岳信仰の一環として唱えるもので、その中には天狗たちへの敬意と畏怖が込められています。天狗たちは、山の神々や自然の力を象徴し、人間界と自然界、現世と霊界をつなぐ存在とされています。そのため、『天狗経』を唱えることで、修験者たちは天狗たちの力を借りて、自己の精神を浄化し、自然と調和し、究極的には悟りを開くことを目指しています。
このように、『天狗経』は、天狗たちと人間との関わりを示す重要な文献であり、その中には日本全国の霊山と天狗たちの関係が詳細に記述されています。これらの情報は、私たちが天狗という存在を理解する上で非常に有用です。
以下に、『天狗経』に記載されている48体の天狗を具体的に列挙します。
秋葉山三尺坊(静岡県・秋葉山)
浅間ヶ嶽金平坊(群馬県・浅間山)
愛宕山太郎坊(京都府・愛宕山)
天岩船壇特坊(不明)
醫王島光徳坊(鹿児島県・硫黄島)
石槌山法起坊(愛媛県・石槌山)
厳島三鬼坊(広島県・宮島弥山)
飯綱三郎(長野県・飯綱山)
上野妙義坊(群馬県・妙義山)
越中立山縄垂坊(富山県・立山)
大原住吉剣坊(鳥取県・伯耆大山剣ヶ峯)
笠置山大僧正(京都府・笠置山)
葛城高天坊(奈良県・主峰金剛山)
鬼界ヶ島伽藍坊(鹿児島県・種子島、トカラ列島悪石島周辺)
熊野大峰菊丈坊(奈良県・大峯山菊ノ窟)
鞍馬山僧正坊(京都府・鞍馬山)
黒眷属金比羅坊(香川県・金比羅山)
高野山高林坊(和歌山県・高野山)
高良山筑後坊(福岡県・高良山)
宰府高垣高森坊(福岡県・竃門山)
紫黄山利休坊(茨城県・紫尾山)
白髪山高積坊(高知県・白髪山)
白峰相模坊(香川県・五色台白峰)
象頭山金剛坊(香川県・象頭山)
高雄内供奉(京都府)
都度沖普賢坊(島根県・隠岐島)
天満山三万坊(岐阜県)
長門普明鬼宿坊(山口県)
那智滝本前鬼坊(奈良県、和歌山県)
奈良大久杉坂坊(不明)
日光山東光坊(栃木県・日光山)
新田山佐徳坊(群馬県・金山)
如意ヶ嶽薬師坊(京都府・如意ヶ嶽)
羽黒山金光坊(山形県・羽黒山)
板遠山頓鈍坊(不明)
比叡山法性坊(京都府・比叡山)
肥後阿闍梨(熊本県・金峰山)
彦山豊前坊(福岡県・英彦山)
常陸筑波法印(茨城県・筑波山)
日向尾畑新蔵坊(宮城県)
比良山治朗坊(滋賀県・比良山)
富士山陀羅尼坊(静岡県・富士山)
伯耆大仙清光坊(鳥取県・伯耆大山)
御嶽山六石坊(長野県・御嶽山)
妙義山日光坊(群馬県・妙義山)
妙高山足立坊(新潟県・妙高山)
横川覚海坊(京都府・比叡山)
吉野皆杉小桜坊(奈良県・吉野山塊)
天狗の歴史
古代中国 | 凶事を知らせる彗星や流星 |
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古代日本 | 神秘的な存在 |
平安時代 | 山に住む物の怪 |
南北朝時代 | 仏敵から怨霊へ |
室町時代末期 | 神もしくは神に近い存在 |
江戸時代(山伏との同一視) | 修験道の影響 |
江戸時代(八大天狗の登場) | 各地に伝わる名高い天狗 |
江戸時代(48天狗の登場) | 全国の霊山から天狗を招聘 |
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