天狗の正体
サンカ(山窩)説
「サンカ(山窩)」が「天狗」の正体であるという説については、一部の文献で言及されています。
「サンカ(山窩)」とは、かつて日本に存在したとされる放浪民の集団で、定住せず狩猟採集によって生活していました。
日本大百科全書によれば、「農耕を営まず、住居を定めず、山間を生活の場として移動する人々をいう。山家、山稼、散家などとも書く。四国高松地方で三界に家なき者のことをサンカまたはサンガイというのと同じだとか、ロマ(かつてはジプシーとよばれた)の故郷といわれる西インドのサンガタの住民サンガニに語源を発するとかさまざまにいわれるが、その語源に定説はない。一般にはさんかとよぶほか、ポン、オゲ、ノアイ、セブリ、箕(み)作りなどともいい、さんかがその仲間をよぶときは、関東ではナデシ、関西ではショケンシ、ケンシ、ケンタなどという。全国的に分布するが、東北地方以北にはいないといわれる。」とあります。
その発生の由来や文化に及ぼした影響などについては多くの謎が残っており、民俗学でも重要なテーマとして扱われています。
彼らは戸籍を持たず、山から山へと渡り歩き、川魚を獲ったり、竹細工や籠、箕(み)などを作り、直し、それらを売ることを生業とし、山中と山里を行き来していました。
また、彼らは箕を生産することでも知られ、交易のために村々を訪れることもありました。
一方、私的所有権を理解していなかったため、村人からは物を盗んだ、勝手に土地に侵入したとして批難されることも多かったようです。
拠点(天幕、急ごしらえの小屋、自然の洞窟、古代の墳遺跡、寺等の軒先など)を回遊し生活しており、人別帳や戸籍に登録されないことが多かったといいます。
一方、天狗は日本の伝説上の存在で、山深くに住み、人間と交流するとされています。その特徴や生活様式は、サンカの生活と一部共通点を持つと考えられます。
このことから、「サンカ」が「天狗」の正体であるという説が生まれたと考えられます。
しかし、具体的な証拠や詳細な研究結果はまだ明らかにされていないようです。
この説は、サンカと天狗の生活様式や行動パターンの一部が似ていることから生まれた可能性がありますが、それが事実であると断定するにはさらなる研究が必要とされています。
しかし、これはあくまで一つの説であり、また、天狗の正体については他にも様々な説があり、その一つには、義経の父・義朝の遺臣が身を隠すために天狗の面を被っていたという説や平家に不満を持っていた鞍馬寺の僧ではないかとも言われています。
このように、「サンカ」が「天狗」の正体であるという説は一部で提唱されているものの、その真偽については確定的な結論が出ていないと言えます。
この説についての詳細な研究や証拠が今後明らかになることを期待します。