天狗の意義
大山のカラス天狗伝説(鳥取県)
大山の天狗
昔、大山のふもとに木こりが住んでいました。
ある日、山に木を切りに入っていると、木のそばに天狗が現れ、木こりの仕事をじっと見ていました。
木こりは「これが大山の天狗か。
聞いたことはあるけど、実際に見るのは初めてだな。
何とかして生け捕りにできないものかな」と考えながら、普通に仕事をしていました。
すると、天狗が突然「お前は今、わしを生け捕りしようと思っているんだろうな」と心の中を見透かすように言いました。
木こりは驚きました。
なぜなら、天狗が木こりの心の中の考えをすぐに読み取ってしまったからです。
木こりはそれ以降、無心で木を切るようにしました。
天狗も興味深そうに仕事を見ていましたが、木こりが切った木のかけらが飛び散り、思いがけず天狗の鼻に当たりました。
すると、天狗は驚いて、「なるほど、人間は心の中で考えてもみないことをやるんだ」と言いながら山の中に逃げ帰ってしまったそうです。
挿し絵天狗の団扇と遠めがね
昔々、大山のふもとに、男の子がいたんだって。
ある日、その子が大山に登ってみることにしたんだ。
そしたらそこには、口の尖った意地悪そうな天狗がいて、なんか団扇を振り回して浮いたり降りたりして遊んでたんだ。
男の子は最初はビビリながらこっそり覗いてたんだけど、そのうち天狗の持ってる空を飛べる団扇が欲しくて欲しくてたまらなくなっちゃったんだ。
なんとか天狗をごまかして団扇を盗んじゃおうって思って、杖にしてた竹の棒からのぞきながら遠くを見て、「おお、あれが大阪の城か」「こっちが京都か、五重塔が見えるな」と大声で騒いで見てた。そしたら天狗が何やらキャーキャー言いながら近づいてきて、「おい、何見てんだ?」「俺はね、この望遠鏡で大阪とか京都を見てんだよ。
ほら、こっちは東京だ。浅草が見えるだろ、賑やかだな」とか言ってた。
天狗もその望遠鏡が欲しくなっちゃってさ。子供に頼んで譲ってくれって言うと、子供は「嫌だよ、やんない」とぐずぐずしてたんだけど、結局天狗が「じゃあ、この団扇と交換しよう」と言ったから、子供は嫌々ながら竹の棒と団扇を交換したんだ。
そしたら交換してすぐ、子供はさっと団扇を使って空を飛んで逃げちゃった。天狗は大喜びで望遠鏡とやらを目にあてて、「さあ大阪」「やれ京都」と見たんだけど、何も見えなかったんだよ。
そしたら、やっと天狗も子供にやられたことに気づいたってさ。
鉄砲撃ちと天狗
昔、大山のふもとには鉄砲の名手がいたんだ。
ある日、大雪の中、山に登って獲物を追っていると、突然強風が吹き、天狗が現れた。猟師が驚いていると、天狗が赤い顔で「おまえの鉄砲はドンパタリンか」と聞いてきた。
猟師は意味がよくわからなかったけど、天狗が襲ってくるかもしれないからとりあえず「うん、俺の鉄砲はドンパタリンだ」と答えた。
後で考えてみると、「ドン」と撃って「パタリン」と倒すのか、それとも「パタリン」と逃げた後に「ドン」と撃つのか、ってことらしい。天狗はその返事を聞いて、「じゃあ、おれを狙って撃て」と言って風のように去った。
猟師も狙いをつけて撃ったけど、何も感じなかった。
でも、その後、大山には大雪の日に足跡が片方だけのものが残されるという話が伝わっているんだ。
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