甲州街道訪ね歩き

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鬼の意義


 呉の秋祭りは江戸時代から続く伝統行事で、呉市内の約30の神社で開催されています。呉市は古くから海軍の基地として繁栄した港町で、秋祭りは海上安全や豊漁を祈願する行事として始まりました。秋祭りの特徴は、「やぶ」と呼ばれる鬼の面をつけた男たちで、彼らは神様の護り手として神社周辺を練り歩いたり、神聖な米俵を突いたりします。

 やぶは神様と敵対する鬼ではなく、神様の使者として崇められています。彼らの面には四季や方位を表す色が塗られ、角や牙がついており、迫力のある顔つきをしています。やぶの衣装は神社ごとに異なりますが、一般的には注連縄を背負い、赤や黄色などの派手な色の着物を身に纏います。やぶの数も神社ごとに異なり、一般的には3~5人のグループが一緒に行動します。

 秋祭りのイベントは前夜祭の「よごろ」と本祭りの「おんまつり」に分かれます。「よごろ」では、やぶが町を駆け回り、子供たちを追いかけては泣かせ、悪いところを指摘して叱りつける一方で、泣いた子供にはお菓子やお金を渡します。これは子供たちの成長を願う行事です。「おんまつり」では、やぶが神社に奉納される米俵を持った神輿を護衛し、米俵が変なものでないかを確認する役割も果たします。

 やぶの活動のハイライトは、俵神輿を神社に奉納する瞬間です。やぶは神社に待ち構え、俵神輿が入ってくるのを全力で阻止します。やぶと俵神輿を担いだ氏子がぶつかり合い、激しい攻防が繰り広げられます。これが俵もみと呼ばれる行事で、神社によっては1時間以上にわたります。俵もみはドラマチックで迫力満点の光景で、多くの観光客や地元の人々が訪れて見物します。

 呉の秋祭りは、今もなお伝統文化として受け継がれ、鬼の面をつけたやぶの活動には神様への敬意と子供たちへの愛情が込められています。秋祭りには多くの人々の協力が必要であり、地元の人々の絆を深める重要なイベントとなっています。