甲州街道訪ね歩き

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鬼の意義


 北海道登別市の「登別地獄まつり」では、閻魔大王と鬼が温泉街にやってきて山車や神輿を練り歩きます。この伝統行事は、閻魔大王と鬼が地獄での仕事から離れ、温泉地で休息するという伝説に基づいています。
 地獄谷には、噴気孔や泥火山があり、熱湯や硫黄の香りが広がっています。地獄谷には、閻魔大王が住んでいるとされる大きな池「地獄の釜」もあります。

(1)祭りの流れ

 登別地獄まつりは、毎年8月の最終土曜日と日曜日に2日間にわたって開催されます。祭りのメインイベントは、閻魔大王と鬼たちが登別温泉街に練り歩くことです。閻魔大王は死者の罪を裁く神様であり、鬼たちは彼の指示で死者を地獄に連れて行ったり、地獄で罰を与えたりする役割を果たしています。
 閻魔大王は鬼たちにもたまには休息を与えることを決め、毎年8月の最終土曜日と日曜日には、地獄の釜のふたを開けて鬼たちとともに登別温泉を訪れます。
 鬼みこしは、地元の中学生や若者が担ぎ、暴れ練り込みや湯かけなどのパフォーマンスを披露します。鬼踊りは、仮装した参加者や鬼踊り団体が大群舞を行い、コンテストもあります。祭りの最後には、地獄谷で花火大会が行われます。

(2)祭りの由来

 登別地獄まつりの由来は、登別温泉の地獄谷に伝わる伝説に基づいています。地獄谷は、約1万年前に日和山の噴火によってできた爆裂火口跡で、多くの噴気孔や泥火山があります。
 ここには、年に一度、地獄の釜のふたが開いて、閻魔大王が鬼たちを従えて登別温泉に訪れるという物語があります。
 この物語は、登別温泉の効能を守るという使命を与えられた湯鬼神たちの伝承とも関係しています。
 湯鬼神たちは、夏の八十八夜に地獄谷で鬼火たいまつをかかげて、地界に暮らす人々のために祈りを捧げると言われています。登別地獄まつりは、この伝説や伝承をもとにして、1951年に温泉祭りとして始まり、1964年に登別地獄まつりとして初めて開催されました。

(3)祭りの歴史

 登別地獄まつりは、登別温泉の観光振興のために、地元の観光協会や商工会などが中心となって企画・運営してきました。祭りの内容は、時代や社会の変化に合わせて、様々に変遷してきました。
 例えば、2004年には祭りの期間が2日間に短縮されましたが、2013年には第50回の記念として3日間に戻されました。また、2014年にはアニメとのコラボレーションが行われ、全国各地からファンが訪れました。祭りの参加者や観客も、年々増加しており、現在では約10万人が訪れる北海道有数の夏祭りとなっています。

(4)登場する鬼の意味

 登別地獄まつりに登場する鬼は、地獄の住人としての悪鬼ではなく、仏教の教えに従って修行する者や、仏の教えを広める者としての善鬼と考えられています。
 鬼は、五大明王と呼ばれる仏の化身として、方位や季節に応じて、白・赤・青・黒・黄の五色の面をつけて現れます。鬼の面は、それぞれに意味があります。
 白鬼は、北方を守る不動明王の化身で、智慧と慈悲を表します。
 赤鬼は、南方を守る増長天の化身で、勇気と力を表します。
 青鬼は、東方を守る阿?如来の化身で、慈愛と平和を表します。
 黒鬼は、西方を守る阿弥陀如来の化身で、悟りと救済を表します。
 黄鬼は、中央を守る大日如来の化身で、真理と光明を表します。

 登別地獄まつりに登場する鬼は、これらの五色の鬼の中でも、特に赤鬼と青鬼が多く見られます。赤鬼は、登別温泉の効能を守る湯鬼神として、人々に健康と幸福をもたらすと信じられています。青鬼は、登別温泉の水源を守る水鬼神として、人々に清浄と安寧をもたらすと信じられています。
 登別地獄まつりに登場する鬼は、地獄の釜から出てきたという設定ですが、実際には、人々の願いや祈りが込められた、温泉街の守り神としての鬼なのです。

 登別地獄まつりは、登別温泉の歴史や文化を伝える貴重な祭りです。鬼の面をつけて踊る姿は、迫力と美しさを兼ね備えています。登別地獄まつりに興味がある方は、ぜひ一度訪れてみてください。