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高尾山自然観察手帳

チョウ高尾山はチョウの楽園

 箕面山(大阪)、貴船山(京都)と並び日本三大昆虫生息地に数えられる高尾山は、数千種類の昆虫が棲み、古くから昆虫研究のフィールドとして愛されてきました。
 


コツバメ

山で見かけたコツバメ

 オスは突き出した小枝の先などでなわばりを見張り、侵入者があると追い出そうとして激しく追飛する行動を頻繁に見せる。春にだけ出てくる比較的地味なシジミチョウです。平地ではあまり多いチョウではない。雑木林の周辺に生息し、敏速に飛ぶ。小さいうえに、翅の茶色が、落葉や樹木にまぎれるので、見失いやすい。
 ツバメというのは、蝶や蛾に時々名付けられるのですが、多くは尾状突起のある種を指します。


ルリシジミ

山で見かけたルリシジミ

 前翅長は12-19mm。林の周囲をせわしなく飛ぶ、白っぽいシジミチョウ。翅の表面は水色〜明るい青紫色。裏面は白の地色に黒色の斑点がある。
ユーラシアと北アフリカに分布し、日本国内では全国的に分布。蛹で越冬し、年3-4回、3-11月にかけて現れ、低地から山地の明るい草地などで見かけられる。 成虫は地面で吸水したり、花で吸蜜することが多い。幼虫は、マメ科、ミズキ科、バラ科など、様々な植物の花やつぼみを食べる。


ミヤマセセリ

山で見かけたミヤマセセリ

 褐色地に黄色紋を散らした翅を持つセセリチョウ。メスは、前翅端の白色部が発達していて、オスよりも美しい。3月下旬から4月、早春に年1回だけ成虫が出現する蝶の一つで、平地から低山地の雑木林(落葉広葉樹林)で、同時期に同じように年一回現れるコツバメと一緒に見られます。
 地上近くを飛び、地表に翅を開いてとまる。落ち葉にまぎれて見つけにくい。幼虫の食草は、クヌギ、コナラ、カシワなど。


モンシロチョウ

山で見かけたモンシロチョウ

 モンシロチョウは、チョウ目アゲハチョウ上科シロチョウ科に分類されるチョウの一種。畑などの身近な環境でよく見られるチョウである。
 幼虫はキャベツの害虫として有名ですが、野生のアブラナ科植物も食べます。モンシロチョウは人間には見えない紫外線が見えると言われており、その理由は人には容易に違いを見つける事が難しいモンシロチョウのオスとメスを簡単に見分けている事から、紫外線で判別していると推測されています。


スジグロシロチョウ

山で見かけたスジグロシロチョウ

 大きさ24〜33mm。赤黒い筋模様が特徴のシロチョウ科の仲間。モンシロチョウよりもひとまわり大きい。羽根の裏側はうっすらとクリーム色に色づいている。忙しく飛ぶモンシロチョウに比べ、ふわり、ふわりとゆるやかに飛ぶ。
 モンシロチョウが比較的日当たりのよい草原を好むのに対し、本種はやや薄暗く湿った場所に生息している。


ウスバシロチョウ

山で見かけたウスバシロチョウ

 ウスバシロチョウはその名のイメージ通り、薄い感じの白い蝶です。薄い感じがするのは鱗粉が少ないからですが、シロチョウ科ではなくアゲハチョウ科です。そのため誤解されないようにウスバアゲハという人もいます。
 白い翅(はね )はところどころが半透明になっており、黒い翅にある脈状のすじがくっきりと浮かび上がって独特の美しさを持つ。胸部と腹部は長めの黄色い毛で覆われており、日中、草地の上などを滑空するようにして飛んでヒメジョオン、ネギ、タンポポ類などの花の元を訪れたりしながら過ごします。比較的、個体数が多い為見る機会は多く、一部では生息域の拡大が進んでいるようです。メスは地面に落ちている枯葉や枯枝に卵を産みます。




アオバセセリ

山で見かけたアオバセセリ

 セセリチョウの仲間には茶色っぽいものが多い中で、このアオバセセリは体全体が青緑色をしており、後翅にオレンジのアクセントが入っているのがとても美しいセセリチョウ。あまりにも特徴的で独特なのだが、ある種の可愛さがあり熱狂的なファンもいる。
 山地の林縁部や渓流沿いで見られ、ウツギなどいろいろな花で吸蜜するが、個体数はあまり多くない。ウツギやリョウブなど,様々な花から花へと次々に移動する。スピードはとにかく速く,細かく羽ばたきながら、直線的に飛び、胴体が太いので、飛んでいる姿に重量感がある。早朝と夕方に活発に活動する。幼虫の食草はアワブキ。


トラフシジミ

山で見かけたトラフシジミ

 北海道、本州、四国、九州に分布。平地から山地の雑木林や沢沿いの林などを主なすみかとするが、都心の公園でもよくみられる。翅(はね)の表はややくすんだ濃青色。裏面に縞模様があるために、虎斑と呼ばれるようです。春型と夏型で模様が変わるので知られているチョウです。早春から出る春型の裏面は特にきれい。
 郊外の里山的環境では比較的多く見られます。飛び方はとてもすばやいが、あまり長く飛ぶことはなく、木の葉の上などで翅を休めていることも多い。活動は日中に行ない、主にクリの花などの蜜を吸う。幼虫はフジやクサフジなどの花や新芽を好んで食べる。


アゲハ

山で見かけたアゲハ

 アゲハチョウとは、アゲハチョウ科に属するチョウの総称であるが、日本では一般的にそのうちの一部のチョウを特にアゲハチョウと呼んでいる。もっともなじみ深いチョウのひとつ。都会の真ん中から山地まで、様々な環境で見ることができる。アゲハチョウの飛ぶ様が、ふわふわと気ままに舞いながら空に揚がるように見えることから名づけられた。
 あまりに普通種すぎて見過ごしがちだが、はねのデザインはとても美しい。幼虫は、ミカンやカラタチの葉を食べる。緑の少ない街なかでも、ミカンの鉢植えさえあれば、このチョウがどこからか飛んできて卵を産んでいく。


キアゲハ

山で見かけたキアゲハ

 その名のとおり、やや黄色っぽいアゲハチョウ。前翅の付け根が黒くなっていることで、普通のアゲハと見分けることができる。後ろ羽根にある青と赤の斑点もハッキリしていてとても美しい。春型は小型で色調も淡く、雌雄で大差はない。夏型の雌は雄に比べて大型で、地色が淡く斑紋も不鮮明である。
 都会の真ん中で見ることは少ないが、成虫は明るい草原、堤防、畑地、庭、海岸を好んで飛翔する。山地では、雄が山頂付近でなわばりを占有する傾向が強い。幼虫はセリのほか、ニンジン、パセリ、ミツバなどの野菜系の葉も食べるので害虫扱いされる。



コミスジ

山で見かけたコミスジ

 大きさ20〜30mm。黒地に白い線が3本目立つ。しかし、よく見ると無数の白い紋が直線的小型のタテハチョウ。イチモンジチョウの仲間では最も小型で普通に見かける種。幼虫がクズやフジなどのマメ科植物を食べるので、比較的都市部にも 多く進出している。
 吸蜜するときやとまって休むときも翅を開くことが多く、和名の由来となった3条の白色条がよく見える。滑空するように緩やかに飛ぶ。4月から10月まで、何処でも見られる普通種であるが、畑地では見られず、林縁で見かけることが多い、庭の花壇の花にも訪れることがある。





ミスジチョウ

山で見かけたミスジチョウ

 タテハチョウ科の中型のチョウで、横長の黒い翅の中に3本の白い線がついているのが特徴。近縁種のコミスジ、ホシミスジ、オオミスジに似るが、本種は1本目の帯がスッキリとした直線状。
はねを開いてとまることが多い。
山地の樹林、渓流沿いなどで見られる。地上で吸水したり、獣糞に飛来する。ミスジチョウの若い幼虫は地味なイモムシであるが、脱皮を繰り返すごとに枯れ葉に近づいていき、蛹(サナギ)になると、完全なる枯れ葉に擬態する。イタヤカエデ、ヤマモミジなどカエデ類の葉を食べて育つ。


オオムラサキ

山で見かけたオオムラサキ

 オオムラサキは、羽を広げると10センチ以上になる大型のタテハ蝶で、雑木林にすむ。羽根の裏面は黄白色〜灰白色、表面は黒褐色地に白〜黄色の斑紋があり、オスは青紫色に輝く。林の上を滑降しながら堂々と飛び、時には小鳥を追いかけることもある。樹液によく来る。
 オオムラサキは、昭和32年に日本昆虫学会において、世界に誇る日本の代表的な、格調高い華麗な蝶として国蝶に決まりました。成虫は6月下旬〜7月下旬にかけて羽化し、国内では北海道から本州、四国、九州に、国外では中国、ベトナム、台湾、朝鮮半島に分布しています。


フジミドリシジミ

山で見かけたフジミドリシジミ

 温帯の落葉樹林に生息する。自然林を好み,二次林にはほとんど生息しない。年1回7月中旬頃に成虫が発生し、雄は主に午後〜夕刻に活動する。早朝は樹林の内部にいる。樹冠をチラチラと飛ぶ独特の占有飛翔を行う。山頂部などに多数の個体が吹き上げられてくることがあるが,一般に多産地でも成虫を見ることは少ない。
 雌は幼虫の食樹であるブナの枝に産卵し、越冬して翌春に孵化した幼虫はブナの芽、葉を食べて成長し蛹化する。ブナ自然林の指標種。


アカシジミ

山で見かけたアカシジミ

 名前の通り赤い(鮮やかなオレンジ色)シジミチョウです。森林に住み、樹上を棲み家とするやや大型のシジミチョウ の一群を総称して「ゼフィルス(Zephyrus)」といいます。ギリシアの西風の精ゼフュロスが語源で、そよ風の精という意味があります。アカシジミはミズイロオナガシジミとともに平地の雑木林でも見られる可能性のあるゼフィルスとよばれるシジミチョウの一種です。
 コナラやクヌギの多い雑木林で見られる、昼間は木の葉にじっととまっていたり、クリなどの花で静かに吸蜜しており、不活発。夕方になると、樹木のこづえにあたりを活発に飛び始める。飛んでいると、近縁種のウラナミアカシジミと見分けがつきにくい。幼虫の食草は、クヌギ、コナラ、ミズナラ、カシワなど。


オオミドリシジミ

山で見かけたオオミドリシジミ

 オスのはねが青緑色に輝く美しいシジミチョウ。メスのはねは黒い。平地から山地までの雑木林に生息する。オスは、山頂や山の尾根などにそれぞれ縄張りを持ち、午前中、林の脇の枝上で占有行動をとる。クリの花などで吸蜜することもある。
 たいていのチョウは昼間に活動するが,ゼフィルスには例外が多く,早朝に活動する種や夕方だけ活動する種もある。メスはあまり動きまわらずにコナラやミズナラ、クヌギなどの木の下や草地などに静止していることが多い。幼虫の食樹は、コナラ、クヌギ、ミズナラ、カシワなど。


オオウラギンヒョウモン

山で見かけたオオウラギンヒョウモン

 その名のとおり、オレンジ色と黒色のヒョウ紋の翅を持つヒョウモンチョウ類のなかまです。この仲間はどれも似たような色彩をしているため、一般には区別が難しいです。本種を含めた3種類(ギンボシヒョウモン、ウラギンヒョウモン)は後翅の裏側に多数の銀紋を持つことで他のヒョウモンチョウ類から区別できます。
 衰退する草原性のチョウの筆頭格でもあり、今は稀少種の代名詞となってしまった。幼虫は各種のスミレを食し,幼虫で越冬する.年1 回,6 月下旬から7 月に出現し,盛夏には一時休眠し秋に再び活動する。


クモガタヒョウモン

山で見かけたクモガタヒョウモン

 ヒョウモンチョウの仲間は夏の高原の代名詞だが,このチョウは他のヒョウモンチョウより早く、5月中旬から現れ,ウツギやヒメジョオンの花を訪れる。近年各地で激減しているチョウです。
 やや山林性のチョウで、林縁部の潅木の花や草花に集まります。低山部では暑さを避けて「夏眠」するので、真夏にはいったん姿を消し、秋に再び現れる。和名の“雲形”は後翅裏面の模様からつけられた名だが,黒い点がちりばめられた翅表は大型ヒョウモンチョウ類の中で,もっとも“豹紋”らしい。幼虫の食草は、タチツボスミレなどスミレ科を食べます。


ウラギンシジミ

山で見かけたウラギンシジミ

 大きさ19〜27mm。シジミチョウ科の中で最も大きい。「裏銀シジミ」の名の通り、翅の裏面が真っ白なモンシロチョウ大のチョウで、日の光を浴びるとそれが反射してまるで銀箔をはった小さな扇のようにキラキラと光り、遠くからでもよくわかる。しかし、羽根の表はオスが濃茶色地に朱色の紋、メスは濃茶色地に水色の紋を持つ。
 林と草原の境目あたりを活発に飛ぶ。地面におりて吸水したり,動物の死体で吸汁したりする性質も強い。幼虫は、フジ、クズなどの花やつぼみを食べる。ヒサカキやカシ類などの常緑樹の葉裏に,頭を葉先に向けて止まり越冬する。同じ葉に数匹が寄り添っていることもあるが,降雪や強風で,越冬中の個体が地面に落ちてしまうこともある。




ムラサキシジミ

山で見かけたムラサキシジミ

 大きさ14〜22mm。羽根を閉じて葉の上に止まっていると、にじみのある地味な茶色をしていて羽の模様は不鮮明な印象です。ところが、開くと鮮やかな青い翅を見ることができる。飛び立つと、チラチラッと見える表羽根の紫がまぶしいほどに美しい。和名ではムラサキになっているが、実際には青く、後翅が青紫色である。
 良く茂った林の木漏れ日の当たる空間や林縁に多く,広い開放的な場所にはあまり出てこない。平地から山麓のアラカシ林に発生し,寺社林にも多い。成虫で越冬する。


ゴマダラチョウ

山で見かけたゴマダラチョウ

 ゴマダラチョウ(胡麻斑蝶)は、タテハチョウ科ゴマダラチョウ属の蝶です。東アジアに分布します。日本では、北海道の一部から九州までに分布します。名の由来は、黒色の翅に白紋が散在する胡麻状まだら模様の蝶である事から。
 翅は丸味をおびている。翅の表は黒色の地に白斑が多数入っている。雄は雌に比べて地色が薄い。翅の裏の地はやや茶色がかった黒色で多数の白斑がある。幼虫はニレ科のエノキの葉を食べて成長します。このため植樹さえあれば、市街地の公園や神社などでも見かけます。


キタテハ

山で見かけたキタテハ

 キタテハは、1年を通して見られる中型のタテハチョウ。草原や河川敷、森や畑などの環境で目にすることができるタテハチョウ科の最普通種。日当たりのよい環境を好み、翅を開いて日光浴する姿をよく見かける。ただ、人の気配には敏感なので、なかなか近寄れない。特に、春先と秋頃はよく目立つところに出てきます。
 表は黄色地に黒褐色の派手な豹柄だが、裏面は地味な木肌模様で、後翅には小さな銀白色のC字紋をもつ。オレンジの地色に黒と青の斑点がとてもキレイです。


ルリタテハ

山で見かけたルリタテハ

 雑木林の周辺で見られ、地上に静止していることが多いが、人の気配を察するとあっという間に遠くまで飛んでいってしまう。
 濃藍色の翅の中をぐるっと半周するように入った瑠璃色の帯が大きな特徴。前翅の先端は幅広い形で突き出ており、メスはその部分がオスよりもやや丸みを帯びている。裏側は暗褐色の地味な樹皮や枯葉のような色をしている。園芸種のホトトギス類を食草にしているといわれている。


サトキマダラヒカゲ

山で見かけたサトキマダラヒカゲ

 夏場に他のジャノメチョウの仲間と同様に、樹液に集まるヒカゲチョウ。真夏にクヌギの樹液にカナブンなどと共に必ずといっていいほどよく集まっている。樹木の周辺を活発に飛び回る茶色っぽい蝶。ジャノメチョウ科は、”蛇の目”とあるように、羽に目玉模様の目立つ仲間をいいます。しかし、サトキマダラヒカゲの蛇の目はそれほど目立ちません。薄茶色の羽に蛇の目模様や波のような模様があり、木の幹や枯れ葉に止まるとそれら色や模様に紛れてわからなくなります。
 やや発生時期の早いヤマキマダラヒカゲとよく似ていますが、ヤマキマダラヒカゲがやや山地性で黒味が強いのに対し、本種は平地で見られ、全体的に黄色っぽい。


クロヒカゲ

山で見かけたクロヒカゲ

 雑木林の内部や山道沿いで見られる黒っぽい地味なチョウ。翅の形はスマートで、翅の裏面に目玉模様がならぶジャノメチョウの仲間。幼虫はマダケやメダケなどのタケ類の葉を食べる。
 チョウには珍しく暗いところが好きで、薄暗い林内や林縁部など日陰の地面にとまっていることや暗い林内を飛んでいることが多い。樹液にもよく来る。幼虫の食草はササ類各種。


アサギマダラ

山で見かけたアサギマダラ

 ゆるやかに飛び,花にきて蜜を吸います。幼虫の体はまだらで,体の前と後ろに一対ずつの角があり,キジョランやカモメヅルなどのガガイモ科の植物を食べています。幼虫も成虫も体に毒があるので,鳥には食べられません。
 アサギマダラは、春から夏にかけて、本州の標高1,000〜2,000mの涼しい高原地域を繁殖地とし、秋、気温の低下とともに九州や沖縄、八重山諸島まで飛んでいきます。また、冬には暖かい地域で生まれた新しく世代の蝶が春から初夏にかけて南から北上し、本州の高原地域に移動します。この移動距離が1,000km以上のものもいます。





セミ高尾山はセミの楽園


ハルゼミ

山で見かけたハルゼミ

 ハルゼミは、体長3cm前後の小型のセミで、春〜初夏に出現し、寄主植物はマツ類に限られるという少し変わったセミです。羽は透明で体色は黒っぽく、ツクツクボウシを小型にしたような外見です。
 アカマツやクロマツなどのマツ林に局所的に生息し、本州ではセミの中で一番早く4月下旬から5月に鳴き始めます。よく晴れた午前中を中心に鳴きます。近年はマツ材線虫病によるマツ林の消失により、大都市圏では産地が激減しています。ぬけがらは地上から2m以上の高いところにつくので、収集がむずかしいセミの一つです。


ニイニイゼミ

山で見かけたニイニイゼミ

 北海道〜沖縄本島以北の南西諸島に分布し、6〜9月に発生する最も普通にいる小型のセミ。オスの腹部は硬質。メスの産卵管は突出しない。ちょっと特殊なハルゼミ(春蝉)を除けば、平地でまず最初に出現するのはニイニイゼミ。鳴き声は「チ−−」と長く引っ張り、尻下がりにピッチ(音程)を次第に下げて急に上げて戻す、を繰り返す。鳴きはじめや鳴き 終わり、あるいは間奏(つなぎ鳴き)には「チッチッチ・・・」と断続音。
 『閑かさや岩にしみいる蝉の声』誰もが知る松尾芭蕉の有名な俳句に登場するセミの種類は、文学者などの間で長いこと議論されていて、諸説ありますがニイニイゼミではないかという説もある。


ヒグラシ

山で見かけたヒグラシ

 体長21〜38mm。同じセミのなかまのツクツクボウシと体の形、模様がとても似ているけれど、体色にはっきりと違いが表れている。体色は個体差があるが、地色は茶褐色でところどころに緑と黒の模様を持つものが多い。オスは腹部が大きいがほとんど空洞で、メスは先端がとがる。ヒグラシは全体が茶色っぽいが、ツクツクボウシは黒っぽい。
 夕刻に鳴くさまが、あたかもこのセミが日暮れを呼んでいるようにみえるのでヒグラシの名がついた。遠くで聞くとカナカナカナ・・・と物悲しく聞こえるが、近くではヒッヒッヒ・・・と聞こえる。


ミンミンゼミ

山で見かけたミンミンゼミ

 その名のとおり「ミンミン」と特有のリズムを刻みながら鳴くので、騒がしい蝉時雨のなかでも比較的聞き分けやすいでしょう。北海道〜九州まで分布し、7〜10月に発生する。体長は33〜36mmほど、羽まで含めると50〜60mmになる大型のセミ。東日本ではおもに平地〜丘陵地に、西日本では低山地〜山地に見られます。
 いろいろな広葉樹林に生息しますが、とくにサクラ類やケヤキを好みます。他の種類との見分け方は、体型と体色を見るとよい。セミの体は楕円形をしているものが多いですが、ミンミンゼミはより丸みを帯びている。


アブラゼミ

山で見かけたアブラゼミ

 北海道〜九州に分布し、7月初旬頃現れ、9月下旬頃まで聞くことができる平地〜低山地にごく普通にいる大型の セミ。平地〜山麓に見られ、その数も少なくありません。発生場所は、人家の庭先から雑木林など広い範囲にわたっており、私たちにもっとも身近なセミ。
 日本の夏を代表するセミの1種。全長はメスが大きい。 褐色の地に黄緑の翅脈の羽に黒色〜赤褐色の体。腹部両側は白粉で おおわれる。ブラゼミは5年間も土の中で幼虫の姿で木や草の汁を吸って過ごし、7〜10月にでてきます。成虫は2週間ほど生き、オスだけが鳴きます。


エゾゼミ

山で見かけたエゾゼミ

 北海道〜九州に分布し、7〜9月に発生する大型のセミ。北海道や東北地方ではおもに平地に見られますが、関東地方以西では標高500〜1,000m前後の山地に見られます。日本にいるエゾゼミ属のセミの中では最も国内分布が広い。
 ブナなどの広葉樹にも生息しますが、むしろアカマツ、モミなどの針葉樹林に多く、スギ・ヒノキの植林地でも見ることができます。黒褐色で、黄色や赤褐色の斑紋がある。鳴き声は震える様な低いビート音を含みながら「ギーー」と鳴く


ツクツクボウシ

山で見かけたツクツクボウシ

 恐らく世界的に見ても最も複雑で音楽的な鳴き方をする小型〜中型 のセミ。姿よりも「オーシィ・ツクツク・オーシィ…」という鳴き声で有名。羽は透明、体は濃いグレーで胸部には濃い緑地に黒い紋がある。新鮮な個体は腹部が金粉の様な微毛に覆われていてとても美しい。細身で黒っぽく、緑色の斑紋があるセミ。
 都市周辺でも普通に見られる。人の気配に敏感なので、どこにもいるわりには姿を見ることは少ない。夏の終わり頃に個体数が増えて鳴き声が目立つようになるので、秋を告げるセミとされる。




トンボ高尾山はトンボの楽園

オニヤンマ

山で見かけたオニヤンマ

 日本最大のトンボ。オニヤンマは飛翔型のトンボの代表であり、ほぼ決まったコースを道路や水路、川などの上を一定の速度でつねに巡回している。多くは川や道に沿ってまっすぐ飛び、適当なところでぐるっとUターンして戻ってくる。
 幼虫は平地から山地の流れにすんでいる。幼虫は円筒形で、からだの表面にたくさんの毛がある。オ ニヤンマの成虫は左右の複眼が一点で接しているため、ほかのよくにたヤンマと見分けることができる。またメスの産卵管はひじょうに長く、尾(腹)の先に突き出たかたちになっている。


ヤマサナエ

山で見かけたヤマサナエ

 成虫が4〜7月に平地や低い山地の川でよく見られる大型のサナエトンボです。日本産のサナエトンボではコオニヤンマに次ぐ大きさである。飛ぶのがはやく、オスは木の葉の上などにとまって“なわばり”をつくります。幼虫はゆるやかな流れにすみ、泥にもぐって生活します。メスは腹のさきを水面に打ちつけるようにして産卵します。成虫は主に昆虫を食べる。


カワトンボ

山で見かけたカワトンボ

 その名の通り川に生息してます。比較的、きれいな川で中流域から上流域でその姿を見ることができます。全身、金属光沢に覆われている種が多いのと、カワトンボ属は翅の色が多種多様で地域性豊かな種が多いです。5月ともなると、野山にでかければ渓流や小川沿いにカワトンボの姿を見かけることが出来る。


ハグロトンボ

山で見かけたハグロトンボ

 真っ黒の翅が、薄くらい藪や川のほとりをひらひらと飛んでいる本州から四国・九州まで広く分布しているトンボです。空気と水が綺麗な場所に住んでいるため、最近は環境保護が進み復活してきたものの、かつては工場化などで水が汚れて、数が少なくなっていた貴重なトンボです。俗にオハグロトンボと呼ばれてたりします。
 5月下旬から出現し、11月ころまで見られます。カワトンボの中では生息期間が長いほうです。羽化した成虫は、未成熟なうちは周辺の森などで蚊などの小昆虫を捕食し集団で群れて生息しています。成熟した雄は水辺に戻って縄張りを持ち、メスを待ちます。


シオヤトンボ

山で見かけたシオヤトンボ

 成熟成虫は、平地から山地にかけての水田、池沼、湿地で見られます。完全な止水域というよりはむしろ緩流域を好むことから、平野部よりもむしろ山麓部に多く見られます。狭い範囲の縄張りの中で、結構バトルをしている姿をよくみます。あまり長くは飛び回らず、すぐに地面などにべたっと止ったりします。春最も早く成虫の現れるトンボの代表です。
 胴体の末端まで白く、ずんぐりした感じに見えます。また、羽の先端にある「縁紋」が赤茶色です。


コシアキトンボ

山で見かけたコシアキトンボ

 黒い体に腹部の一部が白く抜けているため、腰のところが空いている、”コシアキ”というのが名前の由来です。羽化したばかりの個体やメスではこの白い部分が黄色になっています。
 溜め池などで普通に見られ、池の水面近くを活発に飛び回る。複数個体でなわばり争いをしていることも多い。なわばりをもったオスが別の個体と出会うとにらみ合った後、急上昇する面白い行動が見られます。


アキアカネ

山で見かけたアキアカネ

 俗に赤トンボと呼ばれるトンボで、トンボ科アカネ属に分類され、日本では全国的に広く分布しており、平地や丘陵地の池、水田、溝川などで広く発生する。どこでも普通に見られ、数も多い。狭義にはこの種だけを赤トンボと呼ぶことが多く、季節による長距離移動がよく知られています。
 成熟しても、頭部や胸部はあまり赤くならない。胸部の側面には、明瞭な黒条を持つ。6月頃に羽化するが、夏の間は高い山に登って避暑し、秋が近づくと里に降りてくる。


ナツアカネ

山で見かけたナツアカネ

 体長33〜40mm。アキアカネに非常によく似たトンボ。胸の模様にも特徴があります。ナツアカネは胸を横から見ると三本の黒い筋があって、真ん中の筋が途中で立ち消えたようになってます。
 ナツアカネの産卵は空中からパラパラと卵をばらまく方式で、産み落とされた卵は、水田の泥の上に落ちます。卵は乾燥に強く、そのまま泥の上で冬を越し、来年の春、水田に水が引かれるころ、孵化して幼虫(ヤゴ)となります。


ミヤマアカネ

山で見かけたミヤマアカネ

 アカネの仲間は何種もいてよく似ているが、本種は翅の外寄りに黒いバンドが入るのと、翅の前縁に赤い部分があるのが特徴のめずらしいトンボです。北海道・本州・四国・九州に分布し、丘陵地や低山地のゆるやかな流れや田んぼに生息しています。深山(ミヤマ)とあるが、平地から丘陵地でも良く見られる。6月下旬ころから出現し、12月初めころまで見られます。。


ウスバキトンボ

山で見かけたウスバキトンボ

 ウスバキトンボは日本では数も多く、最も普通に見られるトンボのひとつです。その割には知名度が極端に低いトンボでもあります。 アカトンボに似ているが、やや大きくて、翅の幅が広めの、くすんだ黄色〜赤褐色のトンボ。
 ウスバキトンボは主に夏に見られます。ひらけた野原のような場所を集団でひらひら飛んでいるトンボです。オスは成熟すると、背中が赤みを帯びます。


ショウジョウトンボ

山で見かけたショウジョウトンボ

 体長50mm内外。雌と未熟な雄の体は橙黄色をした無紋で腹部が太い。オスは成熟すると美しい深紅色になる。特筆すべきはやはり顔まで真っ赤なことだろう。トンボ類特有の、飛行中の獲物を目視する巨大な複眼すらも深紅に彩られている。初夏から秋にかけて池沼の周辺に多い。成虫は4月から10月にみられる。
 成熟したオスの色が真っ赤なので、中国の伝説上の動物の猩猩から、または猩猩の真っ赤な血の色、日本の伝統色である猩々緋(しょうじょうひ)からついた和名のようです。


ノシメトンボ

山で見かけたノメシトンボ

 大型のアカトンボ。成熟すると赤くなるアカトンボの中では国内最大種。雄雌共に翅の先端に黒褐色斑紋を有し、雄は成熟すると腹部がくすんだ赤褐色と黒褐色の縞模様になるが、雌はあまり変わらない。
 ノシメトンボの「ノシメ」とは、「熨斗目」と書きます。熨斗目とは和服の模様のひとつです。腰と袖にあたる部分に色がついています。ノシメトンボは実物を見るとすぐにわかるように、翅の先端部分が褐色になっています。これが袖に色がついた熨斗目模様と似ている、ということで名付けられたようです。





甲虫高尾山は甲虫の楽園

オダヒゲナガコバネカミキリ

山で見かけたオダヒゲナガコバネカミキリ

 主に山地に生息しますが、平地でもモミが残っている場所では見られることがあります。飛翔能力は低いため、多くの場合はモミの近くに咲く花に集まります。東京では高尾山などに生息します。
 ヒゲナガの名の通り触角が長く、コバネという通り前翅が短く後翅が露出しています。なお「オダ」は、採集者の小田氏によります。


ゴミムシ

山で見かけたゴミムシ

 ゴミムシはオサムシ科に属する昆虫の総称で、日本では1000種以上が知られています。大きさも数mmから数cmまで様々で、黒色のものが多いが緑や藍の金属光沢を持つ種類もあり多彩です。
 「ゴミの中から見つかる」からゴミムシなのだが、これはゴミにわいた昆虫を食べるためであってゴミが食物なのではない。また、通常は枯れ葉や石の下にいる。幼虫成虫とも肉食だが、成虫が植物食の種や幼虫が寄生性の種などもいる。


アオオサムシ

山で見かけたアオオサムシ

 名前のとおり金属的な光沢のある緑色をした美しい種類だが、赤銅色の個体もいる。二対の翅のうち、背部を覆う硬い翅には細かいすじが多数入る。後翅は退化していて飛ぶことができない。
 平地から山地の林やその周辺の地表に住む。日中は倒木や落ち葉の下、土中などに身を潜め、夜になると地上を歩き回り、他の昆虫やミミズを捕らえて食べる。本州の関東・中部より北で見られる。


ハンミョウ

山で見かけたハンミョウ

 ハンミョウ科の昆虫。体長2センチくらい。体は光沢があり、緑・紫・赤・青などの斑紋をもつ。日当たりのよい砂地や山間の小道に多く、人が歩くと先へと飛んでは止まることで知られる。その様子から「ミチオシエ(道教え)」や「ミチシルベ(道標)」とも呼ばれています。
 漢字で書くと「斑猫」です。この字には「斑点があり、矛のように刺す虫」の意味があるそうです。肉食のネコ科の動物が獲物を捕える姿からきている。


コアオハナムグリ

山で見かけたコアオハナムグリ

 全国各地に広く分布して、さまざまな植物の花を訪れる。花に来る緑色ハナムグリのなかで一番よく見るハナムグリ。成虫は、体長11〜16 o。背面は緑色だが、変異が多く暗赤色や黒色のものもいる。背面に淡黄色の大きな斑紋がある。腹面は黒色で光沢がある。中頸側板と腹節両側には小紋があり、尾節には4個の小紋がある。黄褐色の長毛が腹面や尾節板では密生し、背面ではまばらに生えている。


ハナムグリ

山で見かけたハナムグリ

 コガネムシ科の甲虫の1種。日本特産で全土に分布。体長15mm内外,光沢のない緑色,白斑があり,全体に毛がある。成虫は4〜6月に発生,花にくる。幼虫は腐植土を食べる。ハナムグリ亜科ほかのものをハナムグリと総称することもあり,いずれも体はやや扁平。
 美しい種類が多く全世界に約2500種ある。日本にはカナブン,クロハナムグリなど40種以上。花の受粉に深く関わっている昆虫の一つでもある。和名の由来は成虫が花に潜り、花粉や蜜を後食することによる。


シロトラカミキリ

山で見かけたシロトラカミキリ

 平地から山地の樹林や草地などに生息している。その名のとおり、地色はほとんど白に近い。似たような色のトラカミキリの仲間はほかにもいるが、シロトラカミキリは、黒色地に、白色〜黄白色の微毛による斑紋がある。1センチを少し超えるほどの小型のカミキリムシで、姿を見せはじめるのは5月上旬頃から。
 クリ、ノリウツギなどの花に集まる。幼虫は、ケヤマハンノキやブナ科植物の伐採木などの中で育つ。


カブトムシ

山で見かけたカブトムシ

 「昆虫の王様」とも呼ばれ、クワガタムシと並び人気の高い昆虫である。オスは、光沢のある黒褐色〜赤褐色で、頭部に先端が4つに分かれた長い立派な角をもつ。前胸部にも先が2つに分かれた小さな角がある。メスは角をもたず、茶褐色で、全体が微毛でおおわれ光沢は鈍い。
 カブトムシはおもに広葉樹樹幹の垂直面で活動し、付節先端の爪のみが樹皮上での占位に使用される。脚に丈夫な鍵爪をもち、強い力で樹木の幹にしがみつくことができる。


クワガタムシ

山で見かけたクワガタムシ

 鞘翅目クワガタムシ科の昆虫の総称。小〜大型の甲虫で体は強壮。大腮が大きく,特に雄では頭部が大きく,巨大な大腮をもつものが多い。熱帯に多く,全世界に約 900種,日本に約 25種を産する。主食はクヌギやコナラの樹液で、餌場を争ったりメスを巡ってケンカとなった場合には、強靭な上顎で敵対する昆虫を挟み、放り投げる。種によっては朽ち木や枯れ葉に隠れて越冬し、2年以上生きることもある割と長寿な昆虫。


タマムシ

山で見かけたタマムシ

 コウチュウ目カブトムシ亜目タマムシ上科に分類される昆虫の総称です。日本にも数多くの種類が生息していて、なかでも「ヤマトタマムシ」が有名。北海道を除く日本全国で姿を見ることができ、餌となるエノキやケヤキなどが生えている平地や、低山地で活動しています。
 体長は3〜4cm。細長いコメ型で、緑色で金属光沢があり、胸部と上翅に一対の赤い帯を持つ美しい甲虫。幼虫は、エノキ、ケヤキ、サクラなどの弱った木や枯れ木に穿孔し、材を食べて育つ。


センチコガネ

山で見かけたセンチコガネ

 鞘翅目センチコガネ科。糞虫の一種で、糞の下に産卵し、幼虫は糞を食べて育つ。和名の由来は雪隠(せっちん)(汲み取り式便所)からである。体長 14〜20mm。体は半球形に近く,背面はふくらみ,黒色で,銅,紫,藍色などを帯び,金属光沢を持つコガネムシ。頭楯は半円形。大腮はよく発達し,頭楯より前方に突出している。上翅には浅い縦溝がある。動物の糞などに集る。日本全土,朝鮮,シベリアなどに分布する。





秋の虫高尾山は虫の合唱会

カンタン

山で見かけたカンタン

 鳴く虫の女王といわれ,秋の鳴く虫の代表種で,直翅目カンタン科の昆虫。中型で,コオロギの中では例外的な淡黄緑色ないし淡黄褐色をしており,全身が薄緑色、スマートでかよわい感じのする。
 触角は長く、体長の3倍ほどになる。クズ、ヨモギなどをよく食べることから、これらの植物が生える草むらの葉の裏などにひっそり隠れていることが多い。小昆虫の死骸なども食べる。オスは、ルルルルル…と、低く美しい声で鳴く


マツムシ

山で見かけたマツムシ

 体長18〜38mm。スズムシをスマートにしてひとまわり大きくした体つき。色はスズムシほど黒くなく、うす茶色をしていて黒い小さな点がついている。淡褐色で、触角が長い。草の根元にいるため見つけにくい。
 幼虫、成虫ともに草、草のタネ、腐った植物、虫の死がいなどを食べる。雄は発音器のある幅広い翅をもち、ススキなどの根際で夜にチンチロリンと鳴く。


アオマツムシ

山で見かけたアオマツムシ

 体長が20〜25mmくらいで、名前からもわかるように、マツムシをアオくして、ひとまわり大きくしたような体をしている。普通は、街路樹や庭木の樹上に住み、地上に降りることはあまりないため、その姿を目にすることはごくまれである。
 オスの背中の羽には茶色い斑紋があります。8月下旬から10月下旬ごろまで木の上で鳴くコオロギの仲間です。チリー・チリーと高く大きな声で,日没直後によく鳴く。


スズムシ

山で見かけたスズムシ

 夏から秋にかけて、“リーンリーン”と美しい音色で人々を和ませてくれるのがこのスズムシ。北海道や沖縄などを除く日本全国に生息しており、その涼しい音色で、夏から秋の風物詩として古くから愛されている昆虫です。 羽根を広げ、ふるわせて鳴くのはオスのみ。
 基本的に夜行性で、草むらなどの陰になっている場所に潜み、夜になると鳴き始めます。 黒く小さな白く長い触覚と大きな上翅を持ち、この翅に通ったヤスリ状の脈をこすり合わせることで美しい音色を奏でています。


エンマコオロギ

山で見かけたエンマコオロギ

 体長26〜40mm。秋の虫というと思いうかぶのがやはりコオロギではないだろうか。そして、その中でもいちばん多くいる種がこのエンマコオロギ。日本最大のコオロギ。畑や草原にすみ、からだは上下に平たい。触覚はムチ状でとても長く、それほど大きくない複眼の上にはマユ毛のように黄白色の帯があり、正面から見た顔が地獄のエンマ様に見えることからこの名がついた。
 頭が丸っこいのと平たい体は、草の下や石の下にすばやくもぐりこむためのつくりになっている。


ミツカドコオロギ

山で見かけたミツカドコオロギ

 本州から九州まで分布。大きさ 15〜19mm。他のコオロギ同様、つやのある黒っぽい体をしている。雄の顔面に特徴的な突起があり、その名の通り、頭に三つの角(でっぱり)がある。見分け方が難しいコオロギの仲間のなかでは、形態に特徴のある種だ。人家周辺などに普通に見られる。夏から秋に、リリリリッ、リリリリッと強い声で鳴く。


ツヅレサセコオロギ

山で見かけたツヅレサセ

 人家の周辺でもよく見られる普通サイズのノーマルなコオロギ。庭先や原っぱ、畑の地上に多く、石の下や枯れた草の間などで暮らしている。野菜くずや小昆虫の死骸などを食べる。
 オスは、夜に、リーリーリーリーと鳴く。暑い時期は元気よくリーリーリーリーと鳴きますが、気温が下がるにつれてゆっくり悲しげに響きます。「ツヅレサセ」は「綴刺せ」と書くそうで、この虫が鳴き出すと寒い季節が近づいてくるため、この声を聞いて昔の人が「そろそろ冬着の繕い物をしなくちゃ。」と思ったことから来た名前だとか。


オカメコオロギ

山で見かけたオカメコオロギ

 体長13、5〜20mm。同じコオロギ科のエンマコオロギよりだいぶ小さい。このコオロギは,雄の顔面が切断されたように平たくなり,その面が下後方に傾いている特徴をもっている。顔面の輪郭はおよそまるく,正面から見ると両ほほがふくらんで「オカメ」に見えるところからオカメコオロギという。この仲間は日本から5種が知られ,そのうち4種がふつうに見られる。「リッ、リッ、リッ、リッ」と4〜5声ずつ切って鳴く。微妙に音色を変えて「ひとり鳴き」「くどき鳴き」「おどし鳴き」の鳴き分けがある。





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高尾山自然観察手帳

高尾山は植物研究者にとって最良のフィールドとなっており、高尾山で初めて発見された植物もたくさんあります。