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観る(大人のための観光ガイド)

 甲府は、武田信玄や太宰治の歴史がたどれる寺社などが多く、歴史ファンのみならず多くの人が訪れます。
 また美術館やランドマークなどもあり、見どころいっぱいの街です。
 そんな甲府を訪れる大人の旅のために、地元の者しか知らないちょっとだけ詳しい話を加えて、ご紹介します。


じっくり甲府を楽しむ大人には見逃せない観光スポット

千葉佐那の一途な愛

 
 清運寺は坂本龍馬ゆかりのお寺でもあります。それは、坂本龍馬の許嫁とされ、生涯独身を貫いた千葉佐那の墓があるからです。

 こじんまりとしたお墓ではありますが、坂本龍馬ファンなら一度は訪れてみたい場所ではないでしょうか。

 千葉佐那は、天保9年(1838年)、北辰一刀流桶町千葉道場主・千葉定吉の二女として誕生します。兄に千葉重太郎がいます。

 北辰一刀流の剣術を学び、特に小太刀に優れ、10代の頃に皆伝の腕前に達したといいます。また、美貌で知られ、「千葉の鬼小町」「小千葉小町」と呼ばれたといいます。
 
 宇和島藩8代藩主・伊達宗城が残した記録をまとめた『稿本藍山公記(こうほんらんざんこうき)』には、安政3年(1856年)に19歳だった佐那が伊達家の姫君の剣術師範として伊達屋敷に通っていたこと、後に9代藩主となる伊達宗徳(当時27歳)と立ち会って勝ったことが記されている。

 のちに坂本龍馬と知り合い、佐那の回想によると安政5年(1858年)頃に婚約したという。龍馬は姉・乙女宛ての手紙で「(佐那は)今年26歳で、馬によく乗り、剣もよほど強く、長刀もできて、力は並の男よりも強く、顔は平井(加尾)よりも少しよい」と評している。
 初恋の女性と言われる平井加尾を引き合いに出し、容姿が良いのみか、体力・心映え・教養まで秀でている様に褒めている。龍馬の当時の心境を姉に正直にうち明けている手紙である。

「此はしハまづまづ人にゆハれんぞよ。すこしわけがある。長刀は順付ハ千葉先生より越前老公へあがり候人江、御申付ニて書たるなり。此人ハおさなというなり。
 本ハ乙女といいしなり。今 年廿六歳ニなり候。馬によくのり釼も余程手づよく、長刀も出来、力ハなみなみの男子よりつよく、先たとへバうちにむかしをり御ぎんという女の、力料斗も御座候べし。かほかたち平井より少しよし。十三弦のことよくひき、十四歳の時皆傳いたし申候よし。そして、えもかき申候。心ばへ大丈夫ニて男子などをよばず。夫ニいたりてしづかなる人なり。ものかずいはず、まあまあ今の平井平井。」

 佐那は晩年「女学雑誌」(明治26年9月号)に龍馬の談話を発表しています。それには未来の夫である坂本龍馬氏は千葉家で剣術を学んだ際に自分のことを見初め、父定吉に結婚を望んだとのこと。
 そして、天下静定の後を待って華燭の典(結婚)を挙げたいと。定吉もそれを許可し、二人は許婚同士となったというのです。当時は動乱の世。

 夫婦になるのは世の中が落ち着いてからということになり、婚約の証として定吉は龍馬に短刀を、龍馬からは紋付の袷衣が贈られたといいます。

 佐那の回想では龍馬からプロポーズしたようです。しかし、2年後の元治元年に龍馬は京の町医者楢崎将作の娘お龍と出会い、5月頃には結婚してしまいました。この時点で佐那との恋は終わっていたということです。

 維新後、佐那は自分の下へ帰ることのない夫に対して節を守り、生涯独身で通しました。

 父定吉は明治12年に亡くなり、兄重太郎も京都に居を移していました。

 学習院女学館寄宿舎の舎監を務めた後、千住(現東京都足立区千住仲町1番1号)で千葉家伝来の針灸治療院を営んでいました。

 55歳の時、清水小十郎の息勇太郎(25歳)を養子にする。しかし謙明他界の2年後、養子勇太郎が28歳の若さで他界。

 そして、生きる張りを失った佐那は、病の床につき、養子勇太郎が亡くなった翌年の明治29年に59歳でその生涯を終えています。

 山梨県の自由民権運動・小田切謙明とは生前から交友があったと考えられており、佐那は東京谷中で土葬されますが、身寄りがなく無縁仏になるところ、謙明の妻・豊次が哀れみ、小田切家の墓地のある山梨県甲府市朝日5丁目の日蓮宗妙清山清運寺に墓碑が建立されたといいます。

 墓石は台座を含めて高さ約100cm、幅約40cmで墓碑には表に「千葉さな子墓」、裏面には明治廿九年十月十五日逝 坂本龍馬室、左横面に小田切豊次建立と刻まれています。
 豊次が佐那から「私は龍馬の許嫁でした」と聞かされていたためと言われています。 
 
 また、司馬遼太郎の紀行文集『街道をゆく 夜話』(朝日文庫)では、「謙明の死後、豊次はさな子を甲府の小田切家にひきとり、余生を送らせた」と、彼女が晩年を甲府で暮らしたとする記述があります。



詳細情報
名称 清運寺
住所 甲府市朝日5-2-11
アクセス JR中央線甲府駅北口より徒歩13分
甲府駅からバス5分・朝日5丁目下車、徒歩2分
中央自動車道・甲府昭和インターより約20分


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